北茨城地域医療教育ステーション
多職種連携で地域包括ケアの構築に取り組む
北茨城地域医療教育ステーションは、地域を基盤にした医学教育、市民の健康づくり、地域医療の充実を目的に、2012年4月から始まった北茨城市からの委託事業です。2015年6月からは北茨城市民病院附属家庭医療センターに本拠を置いています。
総合診療/家庭医療の専門医教育としては、家庭医療センターが総合診療専門研修Iを、市民病院が総合診療専門研修IIを提供しています。また、地域医療/家庭医療の卒前教育として家庭医療センターでは5,6年生の地域滞在型臨床実習、2年生の早期体験実習や、医療職に興味のある高校生の実習、中学生の職場体験なども行っています。
2016年からは、「北茨城市人材育成プログラム開発事業」を受託し、北茨城市コミュニティケア総合センター「元気ステーション」や薬剤師会とも協力して、多職種連携やスキルミクスに関連した人材育成に取り組んでいます。また、市健康づくり支援課、教育委員会と連携して、市内全小中学校で「がん予防教育」を行っています。
2018年4月から、これらの活動は全て地域総合診療医学寄附講座に引き継がれています。
家庭医療センターの診療
2015年6月にオープンしました。住民にとって地理的にも心理的にも身近にいて、家族ぐるみで何で
も相談できる家庭医療を実践しています。また、人生の最期まで住み慣れたこの地で暮らしたいという
思いに応えられるよう、地域の訪問看護ステーションなど関係事業所と密な連携をとりながら在宅医療に取り組んでいます。
標榜科目 内科、小児科、心療内科
患 者 数 外来診療 約1,600人/月(小児が約20%)
訪問診療 約200件/月
市民病院内科の診療
1946年に開院し、県北地域の中核病院としての役割を担ってきました。2014年11月に移転新築した、きれいな199床の病院です。内科は循環器内科が独立しているほかは臓器横断的な一般内科です。救急診療や家庭医療センターと連携した在宅患者のサポートも担い、地域に根ざした総合診療を実践しています。家庭医療専門医や総合内科専門医の資格をもつ指導医達と、自治医科大学卒業後義務年限中の専攻医、つくば家庭医・病院総合医プログラムの専攻医によって内科は構成されており、各科との壁もなく、総合診療に取り組む環境が整っています。
地域包括ケアを推進する活動
地域の多職種連携推進と市民のコミュニティ作りのそれぞれに関して、専任の研究者2名(教員;理学療法士)が中心となって取り組んでいます。市民病院や、家庭医療センターに隣接する北茨城市コミュニティケア総合センター「元気ステーション」と密に連携して活動を展開しています。
医学生の実習
家庭医療センターには学生用宿泊室が4室あります。ここに1-2週間滞在し、診療だけでなく、地域を基盤にした保健・医療・福祉を体験学習します。全ての実習を通じて、住民の生活を知り、この地域で健やかに生活するための強みと問題点を探り、何らかの提言をするような、フィールドワークの視点を持って取り組むことを課題とします。
スケジュールの一例
1週目 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
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午前 | 大学 | オリエン テーション 外来 |
健康教室 行商サービス 同行 or 認知症患者の 集い |
中郷こどもの家 or 心身障碍者福祉センター |
外来 |
午後 | 訪問診療 | 訪問診療 | 地域診断立案 | 小中学校 がん予防教育 |
|
2週目 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
午前 | 外来 | 外来 | 僻地巡回診療 | 地域視診 地域診断まとめ |
外来 まとめ |
午後 | 介護関連施設 大津おはよう館 or 夢なかま |
訪問診療 | (移動) 大学にて報告会 |
家庭医療センター外来実習
研修医レベルの外来診療実習、採血・皮下注射などの処置や受付実習、待合室実習など。また自分たちで作った健康パンフレットを待合室で配りながらミニ健康教室も行います。
家庭医療センター訪問診療実習
自宅での生活の様子、家族の役割、関係専門職の役割を理解するチャンスです。
巡回診療実習
山間部無医地区の住民のための巡回診療です。これに1日同行して実習をします。
介護関連施設実習
複合型介護サービス施設「元気の郷 大津おはよう館」と住宅型有料老人ホーム「夢なかま」にご協力いただいています。介護関連施設には、その人のニーズに合わせた種々の形態があります。その人の人生・背景や、その人らしい生活を支えるために職員・施設はどのような工夫をしているかなどを、介護の実習を通じて学びます。
さまざまな住民とのふれあい実習
北茨城市心身障害者第一福祉センターで心身障がいのある方の職業訓練に一緒に参加したり、北茨城市コミュニティケア総合センター「元気ステーション」で認知症介護者のつどいに参加したり、中郷こどもの家で子どもたちと遊びつつ保護者と交流したり、北茨城市商工会の行商サービスに同行して買い物弱者の高齢者のお話を聞いたりします。
小中学校がん教育
がんとは何か、がんの予防、がん検診、がんの治療について、学生が講師となって実施します。子どもたちががんについて理解を深めると同時に、親など家族への教育波及効果を狙っています。
地域視診
市内の一地区を選んで、歩きながら町並み、人々などを観察します。時には出会った人にインタビューをしたり、お店に入って話を聞いたりします。テーマは「この地で人々が幸せに暮らし続けるために」です。
ミニ観光
観光地は地域の自慢の場所であり、歴史を伝える場所です。あき時間を使ってミニ観光をしてくることを推奨しています。
学生の感想
- 実際の介護の現場を目にして、介護に当たる家族の負担は極めて大きく、彼らに寄り添うことも医師の務めの一つだと感じた。(2年生 男性)
- 訪問診療患者の家族の健康状態も気にかけ、病気の治療だけでなく生活環境も把握しサポートしていくことも医師として大切だと感じた。(2年生 女性)
- 小学校の予防教室、元気ステーションの取り組み、子育て支援の取り組みなどを見学することで地域が抱えている課題や取り組みを知ることができた。課題には地域ぐるみ取り組むことが大切であり医者は地域の医者だという自覚が必要だと思った。(5年生 男性)
- 病気だけでなくその人全体を診るという意識を持つことがや、診療を行う地域の特性を理解することがこれからの研修に役に立つと感じた。(5年生 男性)
- ネットや資料だけでなく、待合いの患者さん、食事に行ったお店の人などの話を通して、地域の魅力や問題点を知ることができた。どうやったらよりこの地域が良くなるかを考えることが有意義だった。(5年生 女性)
後期研修医より
家庭医療センターは家庭医の研修場所として必要な、①臨床②研究③教育どの点をとっても環境が整っていると言えるのではないかと思います。
臨床)
外来では小児診察や乳児健診、ワクチンや急性期疾患、小、中学、高校生の成長過程の悩み、青壮年期の方の職場や家庭、心についての諸問題や健康増進、高齢の方の健康問題などなど家庭医として必要な多様な健康問題の診療のスキルを学ぶことができます。訪問診療も行なっているため、診療所の外で患者さんのくらしを実際にみる経験を積むことができます。
教育)
健康教育の活動で小中学校や地域の公民館などでセミナーやワークショップをさせていただく機会もあります。
研究)
種々のテーマで研究も行われていますので、指導医から研究についても学ぶことができます。また、筑波大学の医学生やほかの学校の学生さんも実習に来ることが多く、教育を学ぶチャンスも多くあります。
上記が充実するうえで、地域との繋がりも非常に重要ですが、家庭医療センターのすぐ横にはコミュ二ティケア総合センター、通称「元気ステーション」があり顔の見える関係ができていることで患者さんの問題に皆で向き合うことができます。また、関連施設として北茨城市民病院もあり、そこでも総合診療グループの先生方が働いているので患者さんについての連携がスムーズです。
つくばから少し距離がありますが、海の幸がおいしいなど生活する地域としての楽しさもあります。
ぜひ、見学や研修に北茨城に来てください!お待ちしております。
(2017年度修了 大澤さやか)